お客さんと仲良くなる。接客業においても、営業においても、これは基本中の基本である。しかし、なかなかお客さんと打ち解けられないと悩む営業マンやホステスさんなども少なくないようだ。
そういう人は、「ミラーリング」を試してみたらどうだろうか。ミラーリングとは、お客さんの鏡になることである。たとえば、お客さんが足を組んだら、自分も足を組む。指で顎をかいたら、自分も顎をかく。笑ったら笑う。眉をひそめたら眉をひそめる。要するに、鏡のように同じ動作を真似するのだ。
ミラーリングの効果は、心理学の研究でも実証されている。グラハムという心理学者の実験によると、交渉の場においてミラーリングをした場合としない場合を比べると、ミラーリングした場合のほうが、格段に交渉がまとまりやすかったという。また、別の実験では、ミラーリングをすると相手の信頼を得やすいこともわかってきた。
要するに、相手の真似をしていると、相手はこちらに好感を持ち、打ち解けやすくなるのである。
ミラーリングは言葉でも有効だ。キャバクラのマネージャー太田翔一氏(仮名)は、新人キャバ嬢には、まずお客さんの言葉を繰り返せと教えている。
「お客さんが、『今日、すごいものを見たんだよ』って言ったら、『すごいもの?』と返す。『すごい疲れた』って言ったら、『疲れたの?』。簡単なことだろう」
新人キャバ嬢のミキちゃんは、すかさず答えた。
「簡単なことですね」
「こんなことでお客さんから好意を持ってもらえるんだから、意識して使ってごらん」
ただし、注意も必要だ。ベテラン営業マンの上田初氏(仮名)は、
「相手がちょっとでも怪訝な顔をしたらすぐにやめろ」
と後輩たちに教えている。
「ミラーリングを相手が知らないときは、ものすごく効果のある手法なんだが、ミラーリングを知っている場合は、『こいつミラーリングをしているな』と不快に思うことが多いんだ。だから、ちょっとでもいやな顔をされたら、すぐにミラーリングを中止すること」
まさか、相手の声色まで真似する人はいないと思うが、ミラーリングはモノマネではない。顔や声までそっくりに真似ても、相手は決して喜んではくれない。念のため……。
コメント